「droit」 ドロワ、「droite」 ドロワットゥは「右」?「まっすぐ」?
前回の記事ではフランス語の「右」と「左」の持つイメージについて考えました。今回はフランス語の「右」という単語が持つもう一つのまぎらわしい意味について考えたいと思います。
それは「まっすぐ」という意味です。
フランス語で「右の」を意味する形容詞は男性形で「droit」 ドロワ、女性形で「droite」 ドロワットゥですがこの単語には「まっすぐな」という意味があるんです。
そう聞くと「じゃあ、交差点で右に行くかまっすぐ行くかを伝える時どうやって伝えるの?」という疑問がでるかもしれません。確かにまぎらわしそうですね。でもフランス人に聞いてみたら特にややこしいとは思っていないそうです。どういう事でしょうか?
その説明のためにまずこの「droit」 ドロワ/「droite」ドロワットゥという単語について考えてみましょう。
(今回のコラムはフランス語学習感が強めです。。。)
この単語は同じスペルで色んな品詞の働きをします。下のまとめみたいな感じです。
●「droit」 ドロワ
・形容詞(男性形):droit ドロワ 「まっすぐな」「右の」など
・男性名詞:droit ドロワ 「権利」「法律」「正義」「税」「直角」など
・副詞:droit ドロワ 「まっすぐに」など
●「droite」 ドロワットゥ
・形容詞(女性形):droite ドロワットゥ 「まっすぐな」「右の」など
・女性名詞:droite ドロワットゥ「右」など
品詞の意味について
品詞の違いとかは日常生活であんまり意識しないのでピンと来ない方も多いかもしれません。
(品詞についてはこの記事で詳しくまとめていますのでご覧ください。)
正確ではありませんが簡単にまとめるとこんな感じです。
・名詞:物や概念などの名前を表すもの。
例:「ぼくは右を選ぶ」の「右」(←「右」という概念)
・形容詞:名詞に説明を加えるもの。
例:「右の手」の「右の」(←どんな手か説明している。「右の」手)
・動詞:動作を表すもの。
例:「まっすぐ進む」の「進む」(←何をしているかを表す)
・副詞:動詞に説明を加えるもの。
例:「まっすぐ進む」の「まっすぐ」(←どうやって進むか説明している。「まっすぐ」進む)
少し分かりにくいかもしれませんが、「まっすぐ進む」の「まっすぐ」は「進む」という動詞を修飾しているので副詞になり、「まっすぐな棒」の「まっすぐな」は「棒」という名詞を修飾しているので形容詞になるということです。

日本語だと品詞が違うとスペルも少し変わることが多いので区別が付けやすいですが、フランス語はスペルがまったく同じで品詞が違うことがよくあります。(これが日本人がフランス語をややこしく感じる大きな理由のひとつだと思います、)
男性形と女性形で意味を見分ける?
そうやって「droit」 ドロワ/「droite」ドロワットゥを品詞別に考えてみると、形容詞の「droit」 ドロワ/「droite」 ドロワットゥは「右の」と「まっすぐの」の両方の意味がありますが、男性名詞と女性名詞と副詞は基本的にはどちらかの意味しかないことが分かります。
表にすると下のイラストのようになります。

ここから分かるのは形容詞を除くと
①男性形のスペル「droit」 ドロワの場合は「まっすぐ」のイメージを持つ意味になり
②女性形のスペル「droite」 ドロワットゥ の場合は「右」のイメージを持つ意味になる
ということが分かります。
なので「まっすぐ」か「右」かを見分ける場合は最後に「トゥ」が付くか付かないかが大きなヒントになります。(細かく言うと女性名詞のdroite ドロワットゥにも「直線」という意味はありますが。。。)
例1)「Tounez à droite」トゥルネ・ア・ドロワットゥ「右に曲がってください」
(*動詞を説明していますが、この場合の「droite」は間に前置詞の「à」が入っているので副詞ではなく名詞になります。)
例2)「Marchez droit」マルシェ・ドロワ「まっすぐに歩いてください」
(*この場合の「まっすぐ」は方向ではなくてまっすぐな姿勢を表します。)
例3)「Allez tout droit」アレ・トゥ・ドロワ「まっすぐ行ってください」
(*この場合の「まっすぐ」は方向の意味で使われます。)
上の例3であげられているように「まっすぐ」を表すときは「droit」ドロワ の前に形容詞「tout」トゥ「すべて」をつけて「 tout droit」トゥ・ドロワと言うことが多いのでこれは覚えておきましょう。
分からないときは結局文脈や状況で判断
「なるほど、じゃあ両方の意味がある形容詞の場合はどうしたらいいの?」となるかと思いますが、これは残念ながら文脈で判断します。。。
とはいえ「まっすぐ」か「右」かで迷う時はだいたい方向の話だと思うので、その場合は「tout droit」トゥ・ドロワ「まっすぐ」か「à droite」ア・ドロワットゥ「右に」のように副詞や名詞で表現することが多いかと思います。
(方向以外だと例えば「ケガしたのはどっちの手」と言う質問に「まっすぐ」という選択肢はないですし、「この足はまっすぐ?それとも右足?」と聞くこともまずないと思います。)
少ないとはいえ、もし形容詞で言われてどっちを指しているか分からない状況があったら、そのときは間違えないように聞き直して確認しましょう。
余談ですが単語の意味を文脈で判断するというのは日本語でもよくありますね。
例えば「手伝ってもいいですか?」に対して「大丈夫です。」と言われたら、「(手伝ってもらって)大丈夫です。」なのか「(手伝ってもらわなくても)大丈夫です。」なのか判断しづらいですね。この場合は文章ではなく相手の状況や表情や口調から推測するわけですがなかなかややこしいです。
フランス語でも意味が複数ある単語などで「この場合はどっちの意味だろう?」という状況はありますが、その場合は文法から考えるだけでなく、状況をよく見て推測したり聞き直したりして意味を正しくつかみましょう。



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