#16 ルーヴル美術館って…美術館と言うより博物館?

雑学コラム

美術館?博物館?

「パリで一番有名な美術館といえば?」という質問に「ルーヴル美術館」と答える人は多いと思います?しかしこのルーヴル美術館、わたしが昔から疑問に思っていることがあります。
「ルーヴル美術館って…美術館と言うより博物館じゃない?」

確かにダ・ヴィンチの「モナ・リザ」やドラクロワの「民衆を導く自由の女神」を始め、有名な絵画がたくさんあります。彫刻や古代の美術品もたくさんあります。たくさんあるんですが…全体を見ると古代エジプトとか古代オリエントとかを含め歴史的資料のイメージが強いんですよね。(古代の美術品も芸術としてと言うより骨董品としての価値の方が高い気がしますし。)
それに対してオルセー美術館は印象派も含め比較的近代の絵画がぎっしり収められていてまさに「美術館」って感じです。なのでオルセーと比較すると個人的にはルーヴルは「美術館」というよりも「博物館」な気がします。

ルーヴル美術館はフランス語ではMusée du Louvre」ミュゼ・デュ・ルーヴルとなります。オルセー美術館はMusée d’Orsay」ミュゼ・ドルセーです。なるほどmusée ミュゼ が「美術館」という意味なんですね。
じゃあ「博物館」は何と言うのでしょう?
パリには博物館もたくさんあります。例えば軍事博物館やパリ下水道博物館などがあります。
フランス語で軍事博物館はMusée de L’Arméeミュゼ・ドゥ・ラルメ、パリ下水道博物館はMusée des Égouts de Parisミュゼ・デ・ゼグ・ドゥ・パリ と言います。(armée アルメは「軍隊」や「軍」、égout エグは「下水道」という意味です。)

あれ?「博物館」musée ミュゼ ですね。
そうです、フランス語では「美術館」も「博物館」もどちらもmusée ミュゼ なんです。イメージ的には「展示館」とか「コレクションセンター」といった感じでしょうか。なので「美術館」と訳すか「博物館」と訳すかは翻訳次第ということになります。
うーん、個人的にはやっぱりルーヴルは「博物館」と訳した方がしっくりくる気がします。

ちなみにmusée ミュゼ という言葉の由来は古代ギリシャの学堂「ムセイオン」です。「ムセイオン」という名前は同じく古代ギリシャで学問の女神とされるミューズ(ムーサ)から取られています。
英語の「museum」ミュージアム もこの「ムセイオン」を語源としていますが、そういえば「大英博物館」British Museum ブリティッシュ・ミュージアムは「博物館」と訳されていますね。これはしっくりきます(笑)

「モナ・リザ」?ジョコンダ?

ところでルーヴル美術館の目玉、「モナ・リザ」ですが、この絵は「ジョコンダ」とも呼ばれていますね。
フランス語では「La Joconde」ラ・ジョコンドゥと呼ばれています。この違いはなんでしょう?
実はこの3つの呼び方、本質的には同じものなんです。

この絵のモデルになった人物はイタリアのフランチェスコ・デル・ジョコンドの妻リザ・デル・ジョコンドだと言われています。イタリア語で「モナ」は女性につける敬称なので「モナ・リザ」というのは「リザ夫人」のような意味になります。フランス語の「La Joconde」ラ・ジョコンドゥは名字のジョコンドゥに定冠詞「La」 ラ を付けたものでこれも「ジョコンドゥ夫人」のような意味になります。(イタリア語では「La Gioconda」ラ・ジョコンダ で同様の意味になります。)
なので「モナ・リザ」はモデルを下の名前で呼んでいるのに対し「ラ・ジョコンドゥ」「ラ・ジョコンド」は名字をそれぞれフランス語とイタリア語で読んでいることになります。
みなさんはどの呼び方がお好みでしょうか?

ちなみに現代のフランスではよく知っている人のことは名字ではなく名前で呼ぶことが一般的です。(よほど丁寧な方でなければ仕事の同僚や上司でも下の名前で呼ぶことが多いです。)またよく知っている人に向かってその人の名前にmadame マダムやmonsieur ムッシュー をつけて呼ぶこともまずありません。
なのでもし「モナ・リザ」の絵のモデルに親しみを込めて呼ぶなら、名字でも敬称を付けるのでもなく「リザ」と呼ぶのはいかがでしょう。
「昨日ルーヴルで「リザ」を見たよ」
うーん、さすがに狙いすぎですかね(笑)

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