フランスの名前について
「星の王子さま」でも有名な小説家「ドゥ・サン=テグジュペリ」。
本名は「Antoine Jean-Baptiste Marie Roger de Saint-Exupéry」アントワーヌ・ジャン=バティストゥ・マリー・ロジェ・ドゥ・サン=テグジュペリ と言うそうです。日本人の名前と比べてすごく長いですよね。
これを見ても日本人にとってはどれが名字(姓)でどれが名前(名)かよく分からないかもしれません。
ここまで長くなくても外国人の名前は慣れていないとどっちが名字か名前か分かりにくいですよね。
日本だと一般的に姓、名の順番ですが、フランスでは名、姓の順番が多いです。ただ最近は国際社会なので書式によってはどっちを先に書いているか判別しづらい場合もあります。
特にフランスの場合は、「複合名や複合姓がある」、「下の名前が複数ある」など日本人にとって馴染みのない要素がたくさんあり余計に分かりにくいですね。今回はフランスの名前事情について考えてみましょう。
名字と名前の区別
そもそも日本語でも「名前」という単語には「下の名前だけ」の意味だけでなく「フルネーム」や「名字」の意味もありますよね。初めて会った人に「お名前を教えてください」と聞くときは大抵「フルネーム」か「名字」を尋ねているのではないでしょうか。
フランスでも同じで「nom」 ノン という単語は「名前」という意味ですが特に「姓」のことを指します。「姓」のことはもっと丁寧に「nom de famille 」 ノン・ドゥ・ファミーユ とも言います。(famille 」 ファミーユ 「家族」の意味)そして「下の名前」のことは「prénom 」 プレノン と言います。
●nom ノン:「フルネーム」、特に「姓」
●nom de famille ノン・ドゥ・ファミーユ:「姓だけ」
●prénom プレノン:「下の名前だけ」

この辺りも慣れないと「どっちだっけ」と混乱するかもしれませんが、フランスだと文字で書く場合「姓は全部大文字」、「下の名前は頭文字だけ大文字で後は小文字」で書くことも多いです。
例えば「Pierre-Auguste RENOIR」と書いてあったら「Pierre-Auguste」ピエール=オーギュストゥが下の名前で「RENOIR」ルノワールが姓になります。
複合名や複合姓
さて「Pierre-Auguste」ピエール=オーギュストゥという名前は、アルファベットだと間に「-」があってカタカナだと「=」が入っていますね。これは何かと言うと「二つの名前をつないで一つにしている」という意味です。
(名前でなくても「pot-au-feu」ポトフ のように複数の単語をつなげて一つにする時に「-」は使われます。以前の記事もご参考ください。)
フランスでは Jean-Luc ジャン=リュック とか Pierre-Michel ピエール=ミッシェル のように二つの名前を合わせて一つの名前にすることはよくあります。(日本で考えると「太郎正雄」で一つの名前になっているといったイメージでしょうか。)
この理由は「昔のフランスではつけられる名前の種類が少なかったため」だそうです。種類が少ないと同じ名前の人が多くなりすぎるため、二つの名前を組み合わせて別の名前にしていたというわけです。
ちなみにフランスは名字も二つの名字を組み合わせたものがよくあります。例えば夫婦のそれぞれの姓を組み合わせたりする場合そのような「複合姓」になります。
ところで不思議なのはアルファベットだと「-」でつないでいるのに、なぜかカタカナだと「=」に変わっていることです。これはいったいどうしてなのでしょう?
分かりませんがカタカナを「-」でつないでしまうと長音記号(伸ばし棒)とまぎらわしいからじゃないでしょうか?「ピエール―オーギュストゥ」みたいに「ル」の後を「ルー」と伸ばして読んでしまいそうになるからかもしれません。
下の名前が複数ある
フランス人は日常的に使われる名前以外に別の名前を持っていることが多いです。ミドルネームみたいなものかと思ってしまいますが、ミドルネームと言うより「名前を複数持てる」ということのようです。
なので「Antoine Jean-Baptiste Marie Roger de Saint-Exupéry」アントワーヌ・ジャン=バティストゥ・マリー・ロジェ・ドゥ・サン=テグジュペリ の場合は、①Antoine アントワーヌ ②Jean-Baptiste ジャン=バティストゥ(複合名) ③Marie マリー ④Roger ロジェ の4つの名前を持っているということです。
でも普段使う1つの名前以外はあまり使われないことが多いので、例えばドゥ・サン=テグジュペリの場合は①のAntoine アントワーヌ だけをとって「Antoine de Saint-Exupéry」アントワーヌ・ドゥ・サン=テグジュペリ と呼ばれることが多いですね。
貴族の名前?
さて、そういうわけで残った「de Saint-Exupéry」ドゥ・サン=テグジュペリ が「姓」になるわけですが、これも「複合姓」ですね。saint サン は「聖なる」を意味する形容詞でよく聖人の名前の前に付けられます。saint サン は通常は敬称なのですがこの場合は「複合姓」として姓の一部となっていますね。
ではその前についている「de」ドゥ はなんでしょうか?「de」ドゥ は「~の」という意味の前置詞です。昔のフランスの貴族の姓にはこの「de」ドゥ が付けられていました。(他の国でも同じようなものがあります。例えばドイツだと「Von」 フォン が付いたりします。)
なので現在名字に「de」ドゥ が付いている方は先祖が貴族だったんでしょうね。
そう考えると「de Saint-Exupéry」ドゥ・サン=テグジュペリ はなかなか由緒ある名字という事になりそうです。
日本では サン=テグジュペリ と呼ばれることが多いですが、呼ぶときは「de」ドゥ を付けるのを忘れずに。

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